ドクターインタビュー
治療に対する想い
地元・愛知県で高度な治療を提供したいという熱い思い
歯科医師という仕事に、情熱を注いでいるとお伺いしました。
父も祖父もこの場所で歯科医師として開業していたため、昔は歯科医師になりたくないと考えたこともありました。歯科大学に通っている頃も今ほどの情熱はありませんでしたが、歯科医師の免許を取得してから、考え方が大きく変わりました。学生時代は知識がなくても許されていましたが、歯科医師として働き出せばそのようなわけにはいきません。そのことを改めて実感した瞬間、歯科医師としての大きな責任を再確認したように思います。そこからは、先輩の歯科医師との差を埋めるため、学生の頃以上に猛勉強に励みました。その時の思いが、今の情熱に繋がっていると感じます。
地元に戻ったきっかけを教えてください。
大学時代は通学しやすい東京に在住していたため、開業するなら東京が良いと考えていました。しかし、勤務していた東京の歯科医で鈴木先生と出会い、考え方が変わります。勤務していたクリニックは立地が良くなく、通うには電車とバスを乗り継がないといけません。住宅街の中にあり看板すら出ていないものの、先進的な治療に取り組む鈴木院長を慕って全国から多くの患者さんが訪れていました。その様子を目の当たりにし、高い水準の医療を提供すれば、東京にこだわる必要はないと考えるようになったのです。開業後は先鋭の医療機器を導入したいとも考えており、経済的な面で見ても地元の方が自分が理想とする医療環境を整備できるため、戻ることを決めました。
リニューアル時はどこにこだわりましたか。
一番こだわった点は、自分のコンセプトにふさわしい空間になるような雰囲気づくりです。待合室までは土足で入室していただきますが、治療室に入る際は空気感を変えるためにスリッパへ履き替えていただきます。それを見ることで、患者さんだけでなく私自身も気持ちに区切りをつけて気合を入れることができるんです。待合室の椅子は必要最小限にし、少人数の患者さんをゆっくりと時間をかけて治療をするという自分の思いに近づけました。そのため、リニューアル後は予約制に変更しています。
高度な治療を提供している自信があるため、「どんなことでもお任せください」という気持ちが患者さんに伝われば幸いです。
患者さんを深く知るために、細心の配慮やコミュニケーションを最重視
治療方針についてお聞かせください。
患者さんの症状をその瞬間だけ治療するのではなく、最低でも10年、できれば20年以上は大きな修正をせずに済むような、長期的に安心していただける治療を心がけています。患者さんの症例に合わせてどのような治療を行うべきか、その治療を行えば将来どうなるのかを患者さんと時間をかけて話し合い、ご要望やご都合に合わせて治療計画を立てることを重視しています。時には、患者さん一人の治療に2~3時間程度かかることもあるほどです。治療法の決定にたっぷりと時間をかけ、方向性が決まればゴールに向かって一気に治療を始めるのが当院の治療方針です。
患者さんとのコミュニケーションを大切にされているのですね。
歯を治療をするからには、その瞬間だけでなく過去から将来まで患者さんのすべてを診ていきたいと考えています。そのため、患者さんとの会話は非常に重要です。むし歯が痛むという患者さんも、原因はむし歯だけではないかもしれません。本当の原因を知るために、患者さんが何を考えているのか深く知ることが大切だと考えています。この考えは私だけでなく、スタッフにも共有しています。時には、私には言えない悩みをスタッフに話してくれることもあるんです。その結果、患者さんのことをより深く知ることができ、治療法の選択肢を広げることにも繋がります。
患者さんとの印象深いエピソードはありますか。
東京で勤務していた頃、非常に大変な歯の全体治療を行っていた患者さんとのエピソードです。その治療は歯科医師の私だけでなく患者さん本人の負担も大きかったのですが、私の治療方針を理解してくださっていたため、患者さんの「しっかり治したい」という強い意志のもと二人三脚で治療を行いました。その後勤務先を退社することになったため、その患者さんに別の信頼できる歯科医師を紹介し、私たちの関わりは終わりを迎えました。しばらくして、住所を教えていなかったのにも関わらずその患者さんから感謝の手紙が届いた時は、本当に嬉しかったです。嬉しさと同時に、妥協せずに技術にこだわるという思いがより一層強くなりました。
目指すのは、世界に通用する歯科医師
治療ではどのような機器を使用しているのですか。
治療の際は必ずと言って良いほど、マイクロスコープと10倍のルーペを使用しています。肉眼で対応できるケースもありますが、肉眼よりも多くのものが見えるこれらの機器を使用することが、患者さんへの真摯な対応だと考えているからです。
たとえば奥歯が沁みるという患者さんを診察する際、マイクロスコープを使うと肉眼では見えなかった穴が開いているというケースが多くあります。さらに、歯科医師が拡大視野を使って精度の高い治療を行うことで、歯科技工士もそれに応じて精度の高さを重視した物を作ってくれます。そのため、マイクロスコープと10倍のルーペは治療には欠かせません。
そのほかにはどのような治療機器がありますか。
当院では、コンピューターでセラミックを削り歯の詰め物や被せ物を作るCAD/CAMシステムを導入しています。お口の中の写真を撮るだけでその日中に設計通りの歯が出来上がるので、一日で治療を終わらせることも可能です。ただし、セラミックの治療やインプラント治療に関わらず、重要なのは最初の診断です。初診では、歯科用CTが役に立ちます。手術前にCT撮影をすることでコンピューターでのシミュレーションが叶い、安全に配慮したインプラント治療の手術を行えます。CT画像からは歯根や親知らず、顎骨の状態や、顎関節や気道など多くの情報を3次元的に得ることができるため、今後の治療計画にも大いに役立つのです。
今後の展望についてお聞かせください。
先進国の日本ですが、歯科治療においては世界のスタンダードだとは言えません。世界の歯科治療のスタンダードを知るために海外の学会や講習会に積極的に参加しており、学んだ内容を患者さんにフィードバックするのが歯科医師の使命だと考えています。しかし、いつまでも学ぶ側にいるつもりはありません。最終的な目標は、世界で通用する歯科医師になることです。日本人がお金を払って海外で勉強するのではなく、海外から日本へ学びに来てもらうようにならないといけません。その際は、自分の経験や知識を多くの人に披露したいと考えています。そのために、目標に向かって勉強し、技術を高めていきます。
インプラント治療に対する想い
口腔内全体を考慮した最適なインプラント治療
インプラント治療を受ける患者さんが多いと伺いました。
インプラントとは、歯を失った部分に施す治療法であり、ブリッジや入れ歯と同じ一つの選択肢です。インプラント治療が多いのは、決してインプラントが一番良いからという訳ではありません。インプラント治療が選ばれるのは、自分の残りの歯を可能な限り良い状態で残しやすい治療法だからです。健康な歯を削るブリッジや噛む時に完全な力を受け止めることができない入れ歯を選択すると、残っている歯への負担が大きくなります。残りの歯の状態を維持しながら元あった歯のように噛むために、インプラント治療を選択する患者さんが多いのが実情です。
先生は難しいインプラントの手術も行っているんですよね。
当院には、他の歯科医院で手術できないと言われた方や、骨が少なく大幅な増骨が必要な方などの難症例が多くあります。たとえば歯周病や歯根の病気を長年放置すると骨が少なくなり、早く抜いた方が良い状態になることがあります。そのような状態でインプラント手術を行うには、まずは骨作りから始めなければいけません。そのため、他の歯科医院では断られることがあるのです。当院での増骨は、インプラントを埋入する一時手術の際に同時に行っています。
使用しているインプラントについて教えてください。
何百もの種類があるインプラント選びは、インプラント治療の成功例がどれくらい続いたかなど、過去のエビデンスを参考にするのが重要です。当院のインプラントは、スウェーデンで約50年の歴史がある物など世界的なシェアが高い2、3社のメーカーから、患者さんの症状に合わせて使い分けています。実際に本国の工場に生産現場を見に行っており、衛生管理や働き方もお墨付きです。私自身が毎年3、4回海外の学会や勉強会に参加し勉強を続けながら知識を更新しているため、インプラントについてもしっかり学んだ上で選定いたしました。
院長からのメッセージ
インプラント治療は優れた技術ですが、人工物のため何もせずに状態を維持するのは簡単ではありません。電化製品や車と同じように、インプラントにもメンテナンスが必要です。さらにお口の中は湿度100%の過酷な状況であり、インプラントはその中で力を受けながら24時間365日休みなく稼働しています。自分では問題がないと思っていても不具合が起こりやすいため、異変を早く発見するためにも定期的なメンテナンスにご来院ください。
当院の手術では、局所麻酔や半分寝た状態になる鎮静麻酔を使用します。2時間ほどは麻酔がかかった状態のため、手術後そのまま寝ていただくことも可能です。リラックスした気持ちで治療を受けていただければ幸いです。
CTを使った歯科治療に
対する想い
歯科用CTで細かい部分も歴然に
歯科用CTの特徴を教えてください。
パノラマのレントゲン写真では二次元の状態しか見ることができませんが、CTでは三次元の立体画像をあらゆる角度から見ることができます。むし歯や歯周病の治療だけでなく、矯正治療、インプラント治療、抜歯、歯の神経の治療などさまざまな治療において、CTを利用することで内部の構造や細部の状況を的確に把握することができるのです。パノラマのレントゲン写真では見つけられなかった病巣や悪い症状の原因がはっきりとわかるため、正確な診断や治療に繋がります。当院のCTは、口腔内だけでなく顎関節、気道の広さなど広範囲撮影できるため、呼吸など体の問題も含めて安全に配慮しながら治療を行えるのが特徴です。
歯科用CTでは具体的にどんなことがわかるのですか。
歯周病の治療では、歯を支える骨のもろさの状態、矯正治療では、顎の骨の位置や状態を確認するのにCTを使うことが多いです。親知らずが横になって埋まっている状態もはっきりと見えるため、他の歯への影響などを患者さんに説明するのに活用できます。親知らずと神経の距離も数値で表示されるため、神経に触れることなく麻痺が出ないよう配慮しながらの抜歯が可能です。
ほかに役立つことはありますか。
インプラント手術の前に行うシミュレーションでも、CTは活用できます。現在の状態を患者さんと一緒に目で見ながら話ができるので、口で説明するよりも理解していただきやすいと感じます。CTでは広い範囲が見えるため、上顎にある上顎洞という名の空洞も確認できます。インプラント手術の場合、患者さんの骨が少ないとインプラントが空洞に突き抜けてしまうので、薄い幕を持ち上げて内側に骨を増やすサイナスリフトと呼ばれる難易度の高い手術が必要です。そのような場合でも、CTを使うことで明らかになります。
非常に高度な性能を持つCTなのですね。
当院のCTでは、骨の硬さを色で判断することが可能です。一般的な骨は表層が硬く中が柔らかいとされており、そのような状態もあらかじめわかるためインプラント埋入の際に役立ちます。骨の硬さがわかるCTは、数種類しかありません。ピンポイントの部分を照査するCTもありますが、広範囲を見て多くの情報を得たいと考えている私にとって、この機種が最適です。広範囲撮影できる割には、被ばく量が少ないのも特徴の一つです。私はセミナーの講師をする機会が多く、CTの選び方や操作について講演を行うこともあります。
CTとは別にマイクロスコープも利用しているとお伺いしました。
勤務していた歯科医院ではマイクロスコープを通常の治療に利用しており、当院でも自然と導入する流れになりました。普段は16倍の大きさで見ている物が、マイクロスコープを使うことで21倍まで細かく見えるようになります。あまりにも細かなところまではっきりと見えるため、患者さんが「見たくなかった」とおっしゃることもあるほどです。マイクロスコープは、むし歯治療や歯を削る治療、歯の根っこの治療や被せ物を装着する際などさまざまなシーンで活用しています。光源がまっすぐ口腔内を照らすため、非常に見やすく緻密で精度の高い治療に役立っています。
院長からのメッセージ
CTは非常に優れた機器ですが、そればかりに頼ってしまってはいけません。たとえばインプラント手術の際は、CTで事前にシミュレーションしたデータを基に、サージカルガイドと呼ばれるマウスピースのようなものを作製し、歯の欠損部分に当てて手術を行います。しかし、デジタル上で作製されたもののため、数ミリ単位の誤差が生まれることもあるのです。そのため、ガイドなしでも治療できる技術は絶対的に必要で、当院はその点に関して強い自信を持っています。CTの情報量は貴重ですが、その情報を的確に治療に反映するには知識と技術が必要です。CTを活用するにも、常に勉強が大切だと感じています。